この連載では、市場で話題の製品・サービスとその主要ベンダーを取り上げて、「ユーザー企業は、ベンダーとチャネルをどう見極めるべきか?」という観点から解説している。

 今回のテーマはサイボウズのグループウエアである。グループウエア市場は長らくIBMのLotus Notesが独占してきた。日本においても、Lotus Notesは大企業を中心にデファクトとして導入され、現在でも多くの企業で利用されている。

 しかし、中堅・中小企業でのクライアント環境が整うにつれて、中小企業から大企業の部門利用に至るまでグループウエアは一気に普及した。その一翼を担ったのがサイボウズのグループウエアである。以下、起業して15年で中堅・中小企業市場におけるグループウエア導入社数でシェア1位となった同社の戦略を分析する。

怖いもの知らずの大勝負に出たサイボウズの起業

 サイボウズは1997年、愛媛県松山市において現社長の青野氏を含む3名で創業された。2012年で設立15年、社員の平均年齢が31.9歳という若い会社である。従業員は現在357名(連結)、売上高は約42億円(2012年1月連結)となっている。売上の大半はグループウエアパッケージのサイボウズOfficeとサイボウズGaroon、およびそのサポート収入だ。

 社名の由来は“cyber+bozu=Cybozu”。電脳を意味するcyberと親しみを込めて子供を呼ぶ坊主(bozu)からの造語である。「電脳社会の未来を担う若者たち」という意味を込めている(同社の会社案内より)。

 起業からの経緯を簡単に紹介しよう。まず1997年の創業と同時に本業となるグループウエア製品、サイボウズOfficeを発売した。このときの販売方法は当時まだ珍しかったB2B(企業間取引)による直販で、しかも販売方法を省力化するために自社のホームページからプログラムをダウンロードできるようにした。

 2000年に東証マザーズに上場した後、本社を松山市から東京に移転。そして、創業から9年目の2006年に東証一部への上場を果たした。

 2011年現在、サイボウズは中堅・中小企業におけるグループウエアの導入企業数シェア1位を誇る。主力製品はサイボウズOffice、サイボウズGaroonの二つで、2007年以降その座を保持し続けている(図1)。

図1●2011年のグループウエアの導入済み製品/サービスのシェア
図1●2011年のグループウエアの導入済み製品/サービスのシェア

 創業からの経緯を見る限り、サイボウズの経営は順調に推移しているように思える。しかしグループウエアは企業規模の大きい、クライアントPCの多い企業に適したアプリケーションである。前述したように2000年前後にはLotus Notesが大企業を中心に圧倒的なシェアを獲得しており、中堅・中小企業にもほぼデファクトとして導入されつつあった。

 そんな中、サイボウズの創業メンバーはグループウエアに着目し、企業での情報コミュニケーションツールとして利用が進むことを見越して、より手軽に導入・活用が可能な製品というコンセプトで、サイボウズOfficeを市場に投入した。

 サイボウズがグループウエア市場に参入した当時は、いわゆるクライアント/サーバー・システムが急速に普及している時期でもあった。クライアントPCが広まるにつれ、コミュニケーションツールとしてのグループウエアの需要が一気に広がっていた。しかし、中堅・中小企業では、Lotus Notesなどの既存グループウエア製品が高額であること、グループウエアが本来持っている豊富な機能を使いこなせいこともあって、普及はなかなか進まなかった。

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