前回は基幹系システムとクラウドの関係について述べたが、今回は情報系システムとクラウドの関係を取り上げる。
ここでの「情報系システム」にはメール、グループウエア、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理)などが該当する。SFAやCRMを「顧客管理系システム」として分ける場合もあるが、ここでは基幹系と比べてWeb化が比較的進んでおり、社外からアクセスする場面も多いものを「情報系」という形でまとめて扱うことにする。
移行の技術的障壁は高くないが「慣れ」が大きく影響
情報系システム、特にメールやグループウエアは、2000年頃からASP(Application Service Provider)と呼ばれるネット経由のサービスとして提供されていたこともあり、ユーザー企業にとってもクラウド形態での活用をイメージしやすいカテゴリの1つだ。個別カスタマイズが少なくない基幹系システムと比べて、情報系システムではパッケージをそのまま利用する割合が高い。つまり技術的な観点では、既存の情報系システムをクラウドへ移行する際の障壁は、基幹系システムに比べて低いと言える。
しかし、クラウド移行がしやすく無償や安価で高機能なサービスが利用できる状況であるにも関わらず、従来と同じオンプレミスのアプリケーションを継続利用したいと考えるユーザー企業が少なくないのだ。以下のグラフは年商500億円未満の企業に対し、メールおよびグループウエアの今後の利用予定を尋ねた結果である。メールでは83.3%、グループウエアでは74.5%が「現在と同じ製品/サービスの利用を続ける」と回答している(図1、図2)。
こうした結果をもたらず最大の要因が「慣れ」である。メールやグループウエアはほぼ全社員が毎日利用するアプリケーションだ。使い慣れたアプリケーションからの変更は人的サポートの面で大きな負担をもたらす。情報系システムは、「慣れ」の観点からの“スイッチコスト”が実は大きな業務システムであると言える。
このため、情報系システムのクラウド移行を促進していくには、技術面や価格面とは異なる動機付けが必要となってくる。それを探るために、情報系システムが抱える課題を俯瞰(ふかん)してみよう。