今の社会は、様々な部分で機械化やIT化が進み、同時に情報流通が盛んになったことで、あらゆる物やサービスの品質に大きな差異がなくなった。つまり、コモディティー化が進んでいるわけだ。例えば消費者におけるIT化では、携帯電話が一般化し、最近はスマートフォンへのシフトも加速している。平成23年版 情報通信白書にある携帯インターネット利用状況を見ると、全体で約6割、13~19歳では75%、20~29歳は実に90%が携帯電話を利用している(図1)。

図1●IT端末を携帯することが当たり前の時代に
データは総務省「平成23年版 情報通信白書」の「属性別携帯インターネット利用状況」から引用。
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 そしてコモディティー化は、消費者の価値観を従来とは違うものに変えつつある。流行に乗った周囲と同じものではなく、自分自身が良いと思えるものへと、急速に価値観がシフトしてきている。

 こうした社会においては、企業は顧客(消費者)を自社のビジネスに組み入れ、行動や心理を細かく分析して、それぞれに合わせたモノやサービスを提供する必要がある。ユーザー中心、あるいはユーザー参加型の社会である。米国の経営学者であるフィリップ・コトラーは、これをマーケティング3.0と呼んだ。

 実はこの社会的シフトは、システム開発に大きな影響を与える。システムで提供する情報の内容を、消費者一人ひとりに合わせてデザインする必要が出てくるからだ。この考え方はさらに、システムを利用するためのユーザーインタフェースのデザインにも影響する。

経験の価値を高めるデザインに

 北欧やシリコンバレーを中心とした米国では、これらの考え方を「人間中心イノベーション」と呼び、技術やビジネス起点とは違うアプローチでのイノベーションだとして、国家レベルで研究を進めている。そこで重要になるのが、人間とシステムの接点となるインタフェースである。既存のシステム開発の延長上でインタフェースを検討するのではなく、「使っていて気持いい」という視点から抜本的にシステムをとらえ直す必要が出てくる。システム開発で「ユーザーエクスペリエンス」や「アジャイル」が重視されるようになっていることが、これらのトレンドを裏付けている。

写真1●「10年後の情報社会を考える」対話セッションの様子
写真1●「10年後の情報社会を考える」対話セッションの様子
2011年7月に開催。ユーザーインタフェース/マンマシンインタフェースの重要性が高まっていることが最認識された。

 筆者は2011年7月にNTTデータが開催した対話セッション「10年後の情報社会を考える」の企画に携わったが、そこでも、ユーザーインタフェースの重要性を示唆する発言が目立っていた(写真1)。

 重要なのは、ユーザーインタフェースを進化させることで、最終的には人同士がより直感的、かつ直接的に情報をやり取りできるようにすることだ。つまり、ユーザー中心・ユーザー参加型の社会に求められる、よりリアルなコミュニケーションを実現することである。

 少し別の言い方をすると、情報を取り扱う者がこれから最も注目しなければならないのは、「経験価値を高めるデザイン」である。この経験価値を念頭に、インタフェースとして既存のやり方にとらわれないインタラクティブ性を、いかに作り出せるかが問われる。

 冒頭に説明したように、世界中でサービスがコモディティー化、フラット化してきている。どのサービスを享受しても使い勝手や効果は変わらない。だとすれば、重要なのはその先に何があるのか、得られる経験は何かに注目が集まることになる。

ポイントはココ!
■主たるユーザーの行動パターンに合わせたユーザーインタフェースも重要
■収集・管理する情報にはセンシティブ情報も。プライバシー保護策を設計時から考える

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