高価な専用ハードであるネットワーク機器にオープン化を迫る黒船が到来した。その名は新規格「OpenFlow」。業界標準のソフトと汎用ハードで、従来よりも低価格かつ新技術を備えたネットワーク機器を実現できる。その利点に目を付けたNECやNTTデータ、NTTコミュニケーションズなどが採用に乗り出した。OpenFlowを巡るユーザーとメーカーの動向を追う。
「ルーターやスイッチなど現在のネットワーク機器は、サーバーに例えると『メインフレーム』。OpenFlowはネットワーク機器のオープン化をもたらす。ベンチャー企業やユーザー企業でさえも、新しい機器を自由に開発できるようになり、市場の競争原理が激変する」――NECシステムプラットフォーム研究所の岩田淳所長代理は、OpenFlowのインパクトをこう説明する。
OpenFlowは、米国のNPO(特定非営利活動法人)である「ONF(オープン・ネットワーキング・ファウンデーション)」が策定するネットワーク機器の新規格だ。スイッチに関するハード仕様や、スイッチを制御するコントローラーとスイッチとの間のプロトコルを規定する。
OpenFlowを使うと、PCサーバーなどの汎用ハードと規格に準拠したソフトの組み合わせでネットワーク機器を開発できる。ソフトを拡張すれば、新技術を利用したネットワーク機器を容易に実現できるのも強みだ。
現在のネットワーク機器は、独自ハード上で独自ソフトが動作する仕組みを採る。例えばシスコシステムズのスイッチで動くOSは同社の「IOS」や「NX-OS」のみで、他社製OSは動作しない。
加えてネットワーク機器メーカーは近年、従来のイーサネットやTCP/IPを補完する新機能の開発を熱心に進めている。下位層のプロトコルのパケットを上位層プロトコルでカプセル化するトンネリング技術の「GRE」や、経路冗長化技術の「TRILL」などだ。現状では、こうした新機能を利用できるのは同じメーカーの機器だけというケースが少なくない。
1990年代、ルーターやスイッチはオープン化の旗手の役割を果たしていた。TCP/IPによって、汎用的なネットワーク機器が高価な交換機を置き換えた。ところがその後、メーカーによる寡占化や技術の囲い込みが進み、かつてのメインフレームと同様に閉ざされた世界を作りだしている。
ネットワーク機器に再びオープン化をもたらす。これこそがOpenFlowのインパクトに、ほかならない。
ネットワーク機器を分離
OpenFlowが特徴的なのは、ネットワーク機器を二つに分離したことだ(図1)。「OpenFlowコントローラー」は、ネットワークを流れるパケットやフレームの経路を管理する。「OpenFlowスイッチ」は、実際にパケットやフレームを転送処理する。