新鮮なデータを利用者が必要な時に提供する。これを実現するリアルタイムDWHに必要なのは「速さ」だ。

 追求すべき速さは二つある。基幹系システムからDWHへのデータ転送の速さと、DWH自体の処理速度の高速化だ。従来のDWHはこの速さが不足していたために、経営や現場が求める新鮮なデータを適切なタイミングで届けられなかった。

 基幹系システムのDBとDWHの統合により速さを追求したのが北陸コカ・コーラの例だ。両者を同一の筐体に統合することで、データ転送の時間を短縮。大量データを高速処理できるハードウエアを利用し、「直前の在庫量を基に発注量を決めたい」という経営からの要求に応えた(図1)。

図1●「速さ」を追求するメリット
利用者が必要な情報を、必要な時に取得できるようになる
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震災の翌営業日の受注増を把握

 北陸コカ・コーラが実現した基幹系とDWHの統合は、速さを追求する理想的な方法だ。ただし、データの更新が中心である基幹系DBと、参照が中心のDWHを一体化するのは簡単ではない。

 DWHのソフトウエアを一新することで速さを追求したのがエフピコだ。同社では会計や販売、在庫、生産といった基幹系のデータをDWHに日次で転送している。翌朝には現場の社員が、前日までの基幹系のデータを分析できる。

 DWHの処理速度も速い。現在のDWHは「過去3年分の4億~5億件のデータを数十秒で検索できる」(情報システム部ITソリューション課の橋本祐希チーフマネージャー)という(図2)。

図2●エフピコのシステム構成
大量データが高速に処理できる専用ソフト「Sybase IQ」を採用してDWHを構築した
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 DWHを構築するメリットは、「需要の変化が起きた時に、勘ではなくデータを基に状況をつかめることだ」と、エフピコ情報システム部の井上ジェネラルマネージャーは説明する。

 東日本大震災の際には、需要の変化を翌営業日につかむことができた。「前年同日に比べて受注量が130%になっている製品がある」。2011年3月14日の朝、エフピコの受注担当者は受注量の分析画面を見て異変に気づいた。

 担当者はすぐに、受注の増加率順に製品をソートして内容を確認すると、今度は地域別に受注の増加率を表示。分析結果は1分も待たずに返ってきた。

 3月14日は、3月11日に発生した東日本大震災の翌営業日に当たる。分析の結果、「競合他社が被災したことで、通常は取引の少ない小売店や卸からの発注が増えている」との結論にたどり着いた。14日の週は受注が増えると予測し、物流体制の見直しなどに着手できた。

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