2011年以降、にわかにBYOD(Bring Your Own Device)という言葉が使われるようになった。BYODは、企業の従業員が自分の好きな端末(自分が所有する端末)で仕事ができる環境を提供することである。

 スマートフォン、タブレット端末はポータビリティーが高く便利なため、多くのユーザーが常に持ち歩く。またパソコン(PC)に比べてシンプルで、自分好みに「カスタマイズ」するユーザーも多い。こうしたことから、従来に比べて「この端末で仕事をしたい」という声が増えてきている。そこで今回、BYODをテーマとして取り上げる。

「幻滅期」を超えて普及に向かう

 BYODあるいはBYOC(Bring Your Own Computer)を実現すると、従業員は自分で好きな端末を調達できる(場合によっては会社が一定の端末費用を負担)。企業は、これを許す代わりに、端末のトラブルや保守は従業員自身の責任で対応すること、セキュリティや共通で利用するソフトなど一定のルールを守ること──という条件を課すのが一般的である。

 実はBYOD/BYOCの概念は数年前から注目されている。図1はBYODあるいはBYOCのハイプサイクルである。普及段階としては、今は弊社の定義に則ると、「幻滅期」段階にあり、本格的な普及を待つ段階にある。言い換えれば、先行的に導入した企業が結構ある。この先行的に導入する企業・業界の代表例は、米国のIT企業である。

図1●BYOC/BYODのハイプサイクル
Hype Cycle for the High-Performance Workplace, 2010より抜粋。
[画像のクリックで拡大表示]

 米国のIT企業は優秀な技術者を多く輩出し、互いに切磋琢磨しながら、業界全体を発展させている。ただ、優秀な技術者の採用はたやすいものではない。人を採用し、社内にとどめることは戦いとも呼べる行為(War For Talentなどという)であり、その一つの施策として魅力的な職場環境を作ることは重要な経営課題である。

 技術者は、PCをはじめとする端末にもこだわりを持つ人が多い。このような声に応えるために、各社とも「自分の端末を自由に使って構わない」環境を提供するようになった。

 日本では、必ずしもBYOD/BYOCは浸透してこなかった。終身雇用が主流で人材の流動性が低かったことに加え、セキュリティの観点からPCなどの持ち出し/持ち込みを避ける企業が多かった。その状況を変えたのがスマートフォン/タブレット端末である。

 図2は世界におけるスマートフォン/タブレット端末の普及予測である。今後さらに広範囲のユーザーがスマートフォンを持ち、自分好みにカスタマイズした端末を仕事でも使いたいと考えるようになる可能性がある。

図2●スマートフォンとタブレットの販売台数予測
米ガートナー調べ。
[画像のクリックで拡大表示]
ポイントはココ!
■従業員のモチベーション維持とデスクトップへの投資コスト削減を両立
■セキュリティの確保がまず第一。利用ルールの整備も併せて進める

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。