今回は、ERP分野で、ユーザーが押さえておくべきテクノロジートレンドと新しいコンセプトについて解説しよう。

 現在、企業が注目すべきERP関連のテクノロジートレンドは、(1)クラウド、(2)モバイル、(3)ソーシャルだ。これらのトレンドは業務アプリケーション分野に限らず、IT業界全体で注目されており、いわゆる「バズワード」的な受け止め方をされる向きもあろうが、そのインパクトは広く、深い。

 IT業界の重要トレンドが、ERPにおいても注目されているということなのだ。

ベストオブブリード指向への回帰が進む

 ガートナーでは毎年、年初に「戦略的プランニングの仮説事項」(SPA=Strategic Planning Assumption)と呼ぶ予測を各分野で発表している。2012年初頭には、このSPAの一部として、ERPにおけるクラウド、モバイル、ソーシャルの3つのトレンドに関する予測を発表した。

 クラウドに関する予測は、次のとおりだ。

2015年までに、クラウドによりERPの革新と差別化におけるベストオブブリード指向への回帰が進む。

 ベストオブブリードとは、一社のベンダーのスイート製品(すべての機能がパッケージ化された製品)ではなく、業務分野や機能ごとにベストの製品を組み合わせるアプローチのことである。

 ガートナーがERPというコンセプトを提唱してから20年間、ERP製品はスイート化の方向で対応可能な機能範囲を広げ、進化してきた。これに対し、クラウドの影響によって、今後は「スイート」から「ベストオブブリード」へと振り子が振れる、とガートナーでは考えている。

 この背景には、タレントマネジメントのように、これまでシステム化があまり進んでいなかった領域で新興ベンダーによるSaaSが急速に浸透している状況がある。新しい領域なので、いきおい業務や機能は日進月歩の様相を呈しており、そのため、ベストオブブリードでサービスを選択することになる。この動きは、しばらく様々な領域で進んでいくはずであり、それに従って、オンプレミス(自社運用型)の業務アプリケーションと新しく導入するSaaSをどう連携させるかという統合の問題が、重要なテーマになっていくだろう。

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