●敷地内の二つのビルにリソースプールを分散配置し冗長性を確保
●オペレーションを簡略化するツールを開発、迅速に仮想化
自動車部品メーカー最大手のデンソーグループは、本社の電算センターにプライベートクラウド基盤を構築、2011年7月に本格運用を開始した。目的は、社内の各部門やグループ会社が使っている、合計3000台に上る部門サーバーの集約である。
部門サーバーは、日本全国にある約50社のグループ子会社や本社内の部門単位でそれぞれ運用しており、リソースの有効活用や運用管理のしやすさの点で問題がある。これを一つのプライベートクラウド基盤に移設する。
これと合わせて、サーバーを稼働させる管理ツールをデンソーITソリューションズが自前で開発し、運用を簡略化。追加あるいは更新用のハードウエア購入費、運用コストなどIT関連コスト全体を半減させる。サーバー台数、コスト削減ともに大規模なプライベートクラウドの構築例だろう。
部署単位に散在するサーバーを移設
デンソーグループのサーバー集約は、今回のプライベートクラウドが最初というわけではない。既に、基幹系システムとメールシステムについては統合を終えている。
ただ、基幹系システムとメールシステムは、特定のアプリケーションごとにシステムを仮想化環境に移行させ集約するというものだった。プライベートクラウドでは、さらに一歩進めて、動的にリソース配分を変更できる基盤を構築した。今回の対象となる部門クラスのサーバー群は、性能がまちまちで、アプリケーション個別に仮想化すると手間がかかりすぎるからだ。
部門サーバーは、基幹系と連携する業務アプリケーションやグループウエア、ファイルサーバーなど多種。購入時期も各部署や子会社が決めるため、「更改のタイミングや、運用体制がバラバラだった」(デンソーITソリューションズの冨永幸助・ITサービス部設備導入室グループリーダー)。中には「グループウエアのノーツサーバーがWindows 2000で稼働しているなど、適切な運用ができていないケースがあった」(水戸浩三カスタマーサポート部部長)。こうした体制では、ハードウエア更改や運用サポートなどの作業を効率的に進められない。
そこでデンソーグループのIT環境を構築・運用するデンソーITソリューションズは、リソースプールを状況に応じて各サーバーに柔軟に配分できる仕組みとして、グループ全体の部門サーバー用の基盤「ALADIN」を構築した。新規のアプリケーションも、ALADIN上で構築する計画だ(図1)。