昨今、サーバー仮想化技術がIT基盤を支えるようになってきた。仮想化技術を活用すれば、IT資源の使用効率を高めたり、IT資源を手っ取り早く調達したりできるようになるからだ。この潮流は、リモートデスクトップ環境にも及んでいる。遠隔操作の対象となるパソコン自体も仮想化しようというのである。

 社員一人に1台のパソコンを仮想化技術を使って用意し、この操作にリモートデスクトップの仕組みを利用する。これを実現するためのソフトウエアスイート製品が、米VMware、米Citrix Systems、米Microsoftなど、サーバー仮想化ソフトのベンダー各社から提供されている。

 仮想化技術を用いたリモートデスクトップ環境の実現は、最も初期費用が高くなるアプローチである。仮想マシンを実行する高性能サーバー機と、仮想マシンのイメージを格納する大容量ストレージ、そして仮想化ソフトや運用管理ソフトなどの導入が必要になる。

 半面、長期的に見れば、多くのメリットを享受できる。個々のパソコンを仮想化することで、社員によるパソコンの利用状況に応じて動的に仮想マシンをプロビジョニング(配備)できるなど、限られたIT資源を有効に利用できるようになる(図4)。数年単位でコストを試算する大企業や、面倒な実機のパソコン管理から解放されたい企業などに向く。

図4●デスクトップPCを仮想マシンとして実現すれば、多くのメリットを享受できる
社内(プライベートプラウド)に仮想デスクトップ環境を構築することで、ITリソースの最適化、クライアント管理コストの低減、スピード経営による機会損失の回避といった仮想化のメリットを最大限に享受できる。ただし、初期導入コストはかさむ。フル機能のデスクトップ仮想化ソフト(サーバー仮想化、コネクションブローカー、プロビジョニング)や、場合によっては高価な共有ストレージ装置が必要になる
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PC仮想化で資源の使用効率が向上、運用管理も楽になる

 仮想化技術で得られる第一のメリットは、IT資源の使用効率を向上できることである。例えば、社員100人のパソコンのうち、同時に50台だけ動かせばよいのであれば、残りの50台分のIT資源を節約できる。さらに、仮想マシンを動かすサーバー機を負荷に応じてそのつど選択すれば、1台のサーバー機に負荷が集中することがなくなり、サーバー機のCPU/メモリー資源を有効に利用できる。そして、これらのIT資源は、事業の成長などに合わせて後から自由に拡張できる。

 サーバー資源に加えて、ストレージの使用効率も高まる。例えば、Windowsを搭載した100台の仮想マシンを用意する際に、100台分の仮想マシンイメージを独立して用意しておく必要はない。100台の仮想マシンに共通/重複するイメージを共有すれば、より少ないストレージ容量で済む。もし100台すべてが同一の構成でよいのであれば、1台分の仮想マシンイメージを管理するだけで済む。

 実際には、仮想化ソフトの多くは、すべての社員に共通する部分と、個々の社員に固有の部分に分けて仮想マシンイメージを管理する。Windowsシステムのほとんどは全社員に共通であり、個別に管理する必要がない一方、ユーザーごとの文書ファイルなどは個別に管理する必要がある。このように、管理する仮想マシンイメージの分量を最小限に抑えつつ、個別データを管理できるようにしている。

 仮想化技術で得られる第二のメリットは、日々の運用が楽になることである。例えば、仮想マシンのイメージをサーバー側で集中管理できるため、Windowsの更新やアプリケーションのインストールといった作業を効率化できる。仮想マシンのイメージを共有している場合は、一つのマスターデータを更新することで、全データを更新できる。

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