あなたはもうスマートフォンを持っているだろうか?ここ1年ほどの間にスマートフォン市場は急速に拡大し、本格的な普及が始まった。身近なところでもスマートフォンユーザーが増えたと感じている人は多いだろう。

 最近は、スマートフォンを仕事でも使いたいというニーズが高まっている。スマートフォンで社内システムに接続して在庫を管理したり、自席のパソコンにアクセスしたりといった使い方だ。ただし、こうした使い方を実現するには、社内ネットワークへ安全にアクセスする手段が必要になる。そのためのネットワーク技術が「リモートアクセス」だ。

 ここでいうリモートアクセスとは、VPN(Virtual Private Network)を利用して、社外の端末から社内のVPN装置(VPN対応ルーター)に接続すること(図1)。VPNによって端末とVPN装置の間で仮想的な通信路(トンネル)を構築し、インターネット上でデータを安全にやりとりする。

図1●スマートフォンから社内ネットワークにリモートアクセス
スマートフォンを使って外から社内のシステムやパソコンにアクセスするには、VPN(Virtual Private Network)を利用する。VPNには認証や暗号化の仕組みがあるため、安全にアクセスできる。
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 従来、リモートアクセスというとノートパソコンに携帯電話のデータ通信カードを挿してダイヤルアップで接続するという方法が一般的だった。しかしスマートフォンの場合、現状では一度インターネットに接続し、そこからVPN装置に接続する。スマートフォンのインターネット接続は、第3世代携帯電話(3G)や3.5世代携帯電話(3.5G)の回線を利用するか、無線LAN機能を使って自宅のブロードバンドルーター経由で行う。

 本特集では、スマートフォンでリモートアクセスを実現するためのポイントと、機器の設定方法を解説する。リモートアクセスを実現するには、(1)端末、アクセス回線、ルーターが対応するプロトコルにはどんなものがあるか、(2)VPNプロトコルの基礎、(3)ルーターに設定すべき項目──の三つを理解しなければならない。前半の基礎編でこれらを押さえよう。

 後半の実践編では、具体的な機器の設定方法を見ていく。スマートフォンのVPN設定やルーターの設定は、やってみると意外と簡単だ。

 もちろん、実際に導入する際にはセキュリティ面を考慮したり、社内システムをスマートフォンに対応させたりする必要がある。まずは本特集で「接続の方法」を知り、次のステップに進んでほしい。