震災後、東北や関東にとどまらず、中部以西でも電力供給体制の安定性が損なわれ、企業もオフィスの節電や、大規模停電が発生した場合の事業継続計画(BCP)対策を立てる必要に迫られている。そこで、在宅勤務を想定したITシステムの導入状況を聞いた。

 その結果、導入していると答えた企業は31.4%と、全体の3割強にとどまった。自由回答を見ると「在宅で勤務できる仕事内容や部署は限られている」「勤務時間の管理や、社内の承認手続きが対応していない」など、ワークスタイルや社内規定が相容れないという指摘が多く見られた。

Q1.在宅勤務を支援するIT関連システムを導入していますか(一つだけ)
Q1. 在宅勤務を支援するIT関連システムを導入していますか(一つだけ)

 在宅勤務支援システムを導入している企業にその内訳を聞くと、最も多かったのは社外からのリモートアクセス用ゲートウエイで82.6%、次いでメールやグループウエアの外部からの利用手段で75.4%と多かった。それに次ぐのが、仮想デスクトップ/シンクライアントで36.2%。「社員宅のパソコンのセキュリティは管理できない。データを外に出さないことが重要」と考えるユーザーが導入を始めているようだ。

Q2. 具体的には何を導入していますか(あてはまるものすべて)
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 在宅勤務用のシステムの今後の強化、新規導入予定についても聞いたが、この夏に向けての導入意欲はそれほど高くない。強化する予定が3.6%、検討中が11.8%である。

Q3.今夏の電力不足に備えて在宅勤務の支援システムを強化する、または新規に導入する予定はありますか(一つだけ)
Q3. 今夏の電力不足に備えて在宅勤務の支援システムを強化する、または新規に導入する予定はありますか(一つだけ)

 懐疑的なユーザーの声としては、前述のように社内の体制が整っていないという理由のほか、「複数フロアの電源を落とせるくらいの規模で導入できなければ節電にはならない」「社員が分散するほうが非効率。交通機関の間引き運転などを考慮しなければ効果はない」、といった意見が目立った。

回答者のコメントから
 在宅勤務は現状ではあまり現実的なワークスタイルとは感じられない。社員の勤怠状況の管理などに難があるのではないか。ただし、ビジネスアプリケーションもクラウド経由で使えるようになると、ワークスタイルとして検討の余地が広がりそうだ。節電策としては、個人に電力消費を付け替えるだけで、本当に効果があるかは疑問に感じる。
●調査概要
調査対象:「日経コミュニケーション」読者モニター(東北6県と茨城県は調査対象から除外)
調査方法:日経BPコンサルティングのインターネット調査システムで実施
調査日程:2011年5月18日~25日
回答企業数(回収率):402社中220社(54.7%)