クラウドサービスの運用管理操作を、プログラムから制御できる「管理用API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」に、ユーザー企業の注目が集まっている。管理用APIを使いこなすことで、ミッションクリティカルなシステムで行っているような高度な運用自動化や、異なるクラウドサービスの連携などが可能になる。
リクルートは2011年7月、「管理用APIを備えていること」を要件に、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)を選定した。
同社は、これまで各事業部が個別に契約していたIaaSの調達を、情報システム部門に一元化した。2011年4月に23社のクラウド事業者を集め、同社がIaaSに求める要件を提示し、提案を募った。その際に、「従量課金制で利用できること」や「エンドユーザーによるセルフサービス方式で利用できること」と並んで、クラウドの管理用APIの提供を要件に挙げた。選考の結果、IDCフロンティアとGMOクラウドの2社が「IaaSパートナー」に選ばれた。
クラウドの管理用APIとは、仮想マシンの作成や終了、仮想ディスクの管理などを、プログラムから操作できるようにするものだ。こうした操作は通常、ユーザーが管理コンソールを使って行う。管理用APIを使うと、それらをプログラムからでも実行できるようになる。
管理コンソールの機能で十分というユーザーなら、管理用APIは必要ない。一方、管理用APIがなければ実現できない例が、リクルートが目指すクラウド連携だ。
リクルートはクラウド管理用APIを活用して、「エンドユーザーが利用する、リクルート独自のクラウドコントローラを開発する」(MIT United システム基盤推進室の水野一郎氏)予定だ(図1)。
エンドユーザーである各事業部門のWebアプリケーション開発者は、独自のクラウドコントローラを利用して、仮想マシンの管理作業を行う。IaaS事業者が提供する標準の管理コンソールは使用しない。独自コントローラを使うと、IaaSパートナー2社のサービスが同じ操作性で管理できる。エンドユーザーは、IaaSの仕様の違いを意識する必要がない。
リクルートは、コスト削減もにらんでいる。「クラウドは競争が激しいので、より低価格なIaaSが登場する可能性がある。管理用APIのあるIaaSなら、同じようなコントローラを開発できる。エンドユーザーの使い勝手や運用体制を変えずに、低価格なIaaSに移行しやすくなる」(水野氏)。