この連載は、毎月1回、市場で話題の製品、サービス、企業を取り上げて、ユーザー企業がITを導入する際の参考になれば、という狙いである。「ユーザー企業は、ベンダーとチャネルをどう見極めるべきか?」という観点をテーマに、製品やサービス、ベンダーについて解説する。「どうしてシェアが高いのか、評判なのか、それはどういう理由なのか?」という疑問のもと、その内容を説明し、同時に背景となっている市場動向にも触れていく。1回目は富士通マーケティングのSaaS、「GLOVIA smartきらら」を取り上げる。
満を持して登場した中堅中小企業向けSaaS
富士通マーケティングの「GLOVIA smart」は、中堅企業向けのERPパッケージとしては、抜群の実績を持っている。このGLOVIA smartシリーズに、年商100億円未満の中堅・中小企業向けSaaS製品として加わったのが、GLOVIA smartきららだ。同社が、富士通マーケティング(旧社名は富士通ビジネスシステム)として生まれ変わったタイミングで、市場に投入された商品である。
GLOVIA smartきららは、GLOVIA smartとシリーズ名は同じだが、全く別のアプリケーションであるところがポイントだ。現在は、会計(販売開始は2010年10月)と人事給与(販売開始は2011年6月)の2つのモジュールを用意している。富士通マーケティングにとっては、GLOVIA smartきららでエントリユーザーやプライマリユーザーを確保しながら、企業の成長に合わせてGLOVIA smartや大企業向けのGLOVIA SUMMITへ誘導することも、大きな狙いである。
「きらら」というネーミングには、「雲間(クラウド)から見えるひかり(希望)」という意味が込められている。急速に進行しているクラウド化の中で、企業の業務システムを提案する同社が、満を持して中堅中小企業向けSaaSとして送り込んだのが、GLOVIA smartきららなのである。
ただ、中堅中小企業では、SaaSの導入はあまり進んでいないのが実態だ。経済産業省が推進した中小企業向けSaaS活用基盤「J-SaaS」も、実際は、苦戦した経緯がある。あえて、この分野に進出した富士通マーケティングに、勝算はあるのだろうか。