各種のクラウドコンピューティング・サービスを筆頭に、既存のコンピューティング技術では短時間で処理することが困難な「ビッグデータ(膨大な量のデータ)」を扱うサービスが増え、その要素技術が一般企業にも身近なものとなりつつある。今回は、米フェイスブックや米グーグルなども注目する最新ネットワーク技術「OpenFlow(オープンフロー)」を扱う。

 ITの世界では、コンピュータそのものだけでなく、ネットワーク分野でも大きな革新が起きつつある。それが「OpenFlow」だ。ルーターやスイッチ、ロードバランサー、ファイアウオールなどのネットワーク機器と、LANやWANの回線から成る企業ネットワークの構成変更が手間いらずになる。このため、サーバーやストレージの構成変更や増減、仮想マシンの作成なども容易になる。今後のネットワーク設計・運用に際して見逃せない選択肢だ。

 OpenFlow技術には、まずは、扱うデータ量が加速度的に増えているクラウドコンピューティング・サービス事業者やデータセンター事業者からの高いニーズが見込まれ、やがては一般企業へと裾野が広がりそうである。既に、「(さまざまな自社システムの)負荷テストでは、サーバーを増減させてテストを繰り返す。OpenFlowでネットワーク構成の変更が楽になるなら試してみたい」(カブドットコム証券の阿部吉伸事務・システム本部長)と考える企業も出てきている。

■1台のコントローラでネット全体を集中制御

 2011年5月、NECがOpenFlowに基づく製品を世界で初めて出荷した。OpenFlowは、ネットワーク上に置く複数の「OpenFlowスイッチ」を「OpenFlowコントローラ」から集中制御する仕組みになっている。従来は個々のスイッチに搭載されていたパケット転送機能と経路制御機能を分けて、制御機能の方は1台の機器(OpenFlowコントローラ)に集約することで、ネットワーク構成の変更を容易にする(図1)。

図1 OpenFlowでネットワーク管理を一元化
フローの転送ルールをコントローラで作成し、「フローテーブル」として各スイッチに一括配信。スイッチはその情報に基づいてパケットを転送する。
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 「仮想マシンの作成や削除、移動機能の利用など、ネットワークの構成変更を求められる場面は増えている。OpenFlowなら、コントローラ側で設定を変えるだけで済む」(NEC 第一ITソフトウェア事業部の早坂真美子主任)。

 OpenFlow技術は、米スタンフォード大学を中心に2008年から本格的に開発が進められ、2009年に「OpenFlowプロトコル1.0」が策定された。現在は、2011年3月に発足した「ONF(Open Networking Foundation)」という団体が標準化を推進中である。米シスコシステムズや米ヴイエムウェア、米グーグルや米フェイスブック、米ヤフーなど、32社(2011年5月時点)が加盟している。

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