約10年前に、運用の自動化を目指す「自立型コンピューティング(オートノミックコンピューティング)」といったコンセプトが、色々な呼び名をもって提唱されたことがある。しかし、この頃は要素技術が成熟していなかったため、運用の自動化は机上の空論だったといっても過言ではない。
要素技術がほぼ出揃い、そのいくつかが成熟し始めてきている今では、運用の自動化は机上の空論ではなく、現実的なものとなってきた。実際、欧米では、運用自動化のための「ITプロセス自動化ツール」が広く普及し始めているし、グローバルにおけるITオペレーションのハイプサイクルでは、「ITプロセス自動化ツール」は、「テクノロジの黎明期」や「過度な期待のピーク期」を超えて、すでに「幻滅期」に入りつつある(図1)。
欧米で運用の自動化が進む一方、日本国内では、まだ足踏みが続いている。上述のように、グローバルのハイプサイクルでは、「ITプロセス自動化ツール」は「幻滅期」に入りつつあるが、日本では、まだ「過度な期待のピーク期」にようやく入ったくらいだ。それくらい、日本におけるITプロセス自動化ツールの認知度も浸透度も高くない。
日本のガートナーに対する問い合わせも、いまだに「IT資産管理ツール」「ジョブスケジューリングツール」など、システムの「維持管理」のためのツールについての問い合わせが多いのが現状だ。
ただし、日本においても、クラウドサービスやデータセンター事業などのサービスプロバイダでは、積極的な動きを見せている。まだ広い範囲にわたったものではないものの、銀行やテレコム、製造業などの一部の先進的なユーザー企業も、運用自動化の実証プロジェクトや実導入を始めている。来年以降、日本でも、本格的な導入が増えるだろう。