サーバー仮想化も黎明期から普及期に入り、評価目的や小規模な先行導入を進めた利用者が、本格的な導入を進めるようになりつつある。本格導入にあたっては、いくつかの傾向が見られるので、仮想化の特長とからめて解説しよう。
大規模システムでの導入が増える
最も顕著な傾向が、全社展開など大規模なシステムでの仮想化の導入である。前回も触れたが、サーバー仮想化のメリットとしては、主に以下のような点が挙げられる。
(1)物理サーバーの台数を削減することによるコスト削減効果
(2)HAクラスタを構成して、ハードウエア障害発生時にシステムを自動的に再起動してダウンタイムを最小化できる
(3)ライブマイグレーション機能を利用して、システムを停止せずにハードウエアのメンテナンスなどを行うことができる
1つめの物理サーバーの台数削減は、大規模になればなるほど高い効果が得られる。その反面、1台の物理サーバー上で動作する仮想サーバーが多くなるため、仮想化技術そのものの安定性が、大規模導入においては特に重視される。
仮想化技術の根幹を成すハイパーバイザーの性能や安定性は、以前から導入検討にあたっての検討課題として挙げられていたが、最近では多くの実績もあり、性能的にも大きな劣化がないことが分かってきたため、この課題はクリアされるようになってきたと言える。
また、残り2つのメリットであるHAフェールオーバー、ライブマイグレーションもインフラとしての仮想化環境の安定性を高める技術のため、大規模導入においてもメリットが大きいと判断されるようになってきている。
クローズアップされる運用管理
一方、サーバー仮想化の大規模導入による新たな課題として、運用管理の面がクローズアップされつつある。
これまで大規模システムを運用してきたのであれば、何らかの運用管理ツールを導入している可能性が高いが、それらのツールに新たにサーバー仮想化環境を管理対象として組み込むことができるかどうか。また、ライブマイグレーションやテンプレートを使った新しい仮想マシンの作成といった仮想化独自の機能を管理フローに取り込むことができるか---といった点が、検討課題として挙げられる。