ユーザー企業が安心してクラウドサービスを利用できる環境を作るには、クラウドサービス事業者が積極的に情報を公開することが不可欠だ。日経コンピュータと日経BPコンサルティングが実施したクラウドサービスの利用実態調査で分かったクラウドサービスの課題や不安、その解消策を紹介する。

「分からない」ことが課題

 ユーザー企業がクラウドサービスを利用する際の課題や不安を聞いたところ、上位三つには「○○が分からない」という言葉が並んだ。1位から順に「コスト効果があるかどうかが分からない」(54.1%)、「セキュリティが十分かどうか分からない」(53.8%)、「サービスの継続性が分からない」(39.8%)だった(図1)。ユーザー企業がクラウドサービスと賢く付き合っていくには、ITベンダーの提案や情報提供が欠かせない。ところが、クラウドサービスを利用するかどうかの判断に役立つ情報が不足しているようだ。

図1●クラウドサービスを利用する際の課題や不安
図1●クラウドサービスを利用する際の課題や不安

 クラウドサービス提供事業者の情報公開姿勢に対する不満の声は少なくない。「料金を聞いたら個別相談と言われた。相場感も分からない。これでは経営層や利用部門に、投資の妥当性を説明できない」(製造業のシステム部長)。「実際に契約するまで、契約内容や契約条件が分からない。あるサービスでは申し込みする段階で、ITベンダーが一方的に利用料金を値上げしたり、サービスを打ち切ったりできる条件が契約内容に含まれていた」(流通業のシステム企画部長)などである。

 「ITベンダーに対する改善要望」で最も多かったのは、「もっと値下げしてほしい」だったものの、情報公開の強化を求める回答が上位を占めた(図2)。「セキュリティ管理体制を明らかにしてほしい」(51.1%)、「料金体系を明らかにしてほしい」(48.1%)、「システムの構造や管理体制を明らかにしてほしい」(40.2%)が目立つ。ユーザー企業の不満に応えられるかどうか。クラウドサービスを提供するITベンダーの“情報公開力”が問われている。

図2●クラウドサービスに関するITベンダーへの改善要望
図2●クラウドサービスに関するITベンダーへの改善要望