パンデミックや自然災害を機に、事業継続計画(BCP)の重要性が増している。情報システムの文脈では、在宅勤務を可能にする製品や、災害時のサーバー復旧/データ復旧に関わる製品が、以前よりも増して注目を集めている。こうした中、データ保護という基本的な需要を満たす製品として、データバックアップ・ソフトが市場を形成している(表1、表2)。適用ケースも確立されている。
製品名 / ベンダー | 概要 |
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CA ARCserve/CA Technologies | Windowsに特化した安価な製品として、主に部門サーバーのバックアップ用途に使われてきた。重複排除はバックアップ処理中にバックアップサーバーが実施する。重複排除の単位は可変長のブロック単位。仮想環境では仮想サーバーイメージから直接ファイルを取り出せる。 |
EMC Avamar/EMCジャパン | エージェント側でデータの重複を排除する機能を備える。重複排除の単位は可変長のブロック単位。データの一部分だけが変更された場合でも、効率よく重複を検知する。画像ファイルや文書などの非構造化データのバックアップに適する。重複排除ストレージ「EMC Data Domain」のエージェント機能も内包する。 |
NetVault Backup/日本クエスト・ソフトウェア | 古くから、マルチプラットフォーム環境でサーバー・モジュールを柔軟に構成できるようにしていたソフト。エージェント側でのデータ圧縮機能などを備える。重複排除はオプションで、バックアップ処理後のストレージに対して実施するポストプロセス型。 |
Symantec Backup Exec/シマンテック | Windows NTの標準バックアップツールの上位互換としての歴史を持つ。エージェント側でデータの重複を排除する機能を備える。重複排除の単位はファイルの先頭から128Kバイトごとに分割した欠片単位。 |
Symantec NetBackup/シマンテック | UNIX環境を中心とした大規模システム向け。エージェント側でデータの重複を排除する機能を備える。重複排除の単位はファイルの先頭から128Kバイトごとに分割した欠片単位。バックアップ負荷を複数サーバーに分散させられる。 |
製品名 / ベンダー | 概要 |
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EMC DataDomain/EMCジャパン | データバックアップ・ソフトが送ってくるデータを4K~16Kバイトの可変長セグメントに分割し、ストレージ側でリアルタイムに重複を排除する。専用のエージェントにより、エージェント側でデータを分割し、データの識別子をストレージに問い合わせ、重複していないデータに限って転送する運用もできる。 |
FalconStor CDP、FalconStor VTLなど/ファルコンストア・ジャパン | FalconStor CDPは、障害発生時に直前のデータに復旧できるようにするCDP(継続的データ保護)機能を備えたストレージ製品。変更があったブロックを常時ミラーディスクにコピーする。iSCSIターゲットソフトと、CDP機能を備えた専用のエージェントソフトで構成する。 |
データをバックアップするための製品やサービスは各種ある。これらは、BCPの要求に応じて使い分ける。ここではRTO(リカバリに要する時間)とRPO(どの時点のデータまで戻せるか)の2つの視点が重要になる。
お金をかけられる場合は、複数拠点のデータセンターを同時に運営したり、遠隔拠点のストレージにデータをレプリケーションしたりする。一方、あまりお金をかけられない場合は、バックアップデータだけを定期的に遠隔地に保存したりする。
ストレージの種類などのシステム構成を問うことなく、最も安価に導入できるバックアップ製品が、データバックアップ・ソフトである。使い方としては、大きく、テープにデータをバックアップするやり方と、ネットワーク上のNASストレージにデータをバックアップするやり方の2通りがある。後者の方法では、クラウドサービスとして提供されているオンラインストレージをバックアップ先として利用することも可能である。
データバックアップ・ソフトのうち、ディスクへのバックアップに特化した製品では、CDP(継続的データ保護)ソフトなどのように、特徴的な機能を備えた製品がある。このほか、バックアップソフトと組み合わせて利用するハードウエア製品として、バックアップ用途をうたうNASストレージがある。遠隔地へのレプリケーションでは、WAN高速化装置を組み合わせるやり方も一般的である。