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 日経コミュニケーションでは,2005年10月1日号からネットワークとコンピュータのソリューションについて取り上げた「理論派ネットワーキング−−つなぐだけではもう通用しない」という連載を掲載している。

 今やIT部門に携わるユーザーにとって,ネットワークだけでなくコンピュータ分野の技術やビジネスの知識も不可欠。こうした課題に対して,日本IBMでアプリケーション開発,ミドルウエアやネットワーク・サービスなどを幅広く手がけた山下克司氏がその解法を明らかにしていく。

Vol.1
「便利なだけ」では投資に値せず
ビジョンを実現するネットを作れ

単にユーザーのオフィスに合わせたネットワークを構築すればいい――との時代は終えんを迎えた。どのような価値を生み出すのか真剣に考えた上で,設計や投資を行うべきだ。初回となる今回は,価値を生み出すための土台となる「ビジョン」「ストラテジー」「タクティクス」のネットワーク投資への適用を考察する。(本誌,以下に10月1日号の日経コミュニケーションから一部を掲載)

 
   
 オフィスで働く知的生産者(ナレッジ・ワーカー)の生産性を評価することは難しい。最近ではフレックス・タイムや在宅勤務など勤務時間が流動化しているため,生産性を計る単位時間の定義もあいまいだ。

 ともするとナレッジ・ワーカーの生産性と,従業員一人当たりの売り上げなどの業績評価が混同されてしまっている。業績評価はシステム投資の評価としては適していない。景気や市場動向に左右されてしまい,システムの評価を見極めにくいからだ。

 企業の論理としては,成長を呼び込まない設備投資には消極的にならざるを得ない。テクノロジー主体でのシステム提案が陥りやすい,わなと言える。ネットワークは単にユーザーにとって便利な道具であるだけでは,投資するには値しないのだ。もちろん経営陣も承諾しないだろう。

 なぜこうなってしまうのか。大きな原因として考えられるのは,ネットワークを導入する際のビジョンの欠如である。

 投資において重要な事は「生産性」でも「TCO削減」でもない。ネットワークへの投資は,自社の市場を拡大したり新たな需要を創造する,あるいは顧客を確保するといった成長への源泉であるということを認識すべきだろう()。

 現在のネットワーク投資に欠けているのは,こうした企業の成長する姿を描いたビジョンではないだろうか。ネットワークはこのビジョンを実現するために作るものという考え方だ。

山下 克司
(やました・かつし)

日本アイ・ビー・エム
ネットワーク&サイトインテグレーションサービス事業部 シニアコンサルティングITスペシャリスト

87年,日本IBMの研究開発部門に入社。その後SEとして営業部門に転じ,オフィス・コンピュータのS/38,AS/400のデータベース・アプリケーションの開発および技術支援に携わる。2000年にネットワーク・サービス事業部に異動。ネットワークの視点から,企業の基幹業務システムや情報基盤のコンサルティング,設計,構築を手がける。2003年から現職。日本IBMではネットワーク・サービス事業部全体の技術戦略を担当している。IBM全世界共通の基準で優れた技術力を有する社員に与えられるIBM Certified Professionalの資格を持つ。

第1部 「ビジネス投資とネットワーキング」
Vol.1 「便利なだけ」では投資に値せず
ビジョンを実現するネットを作れ

  Vol.2 常にROIを考えて投資をせよ
IP電話に見る回収の方策
Vol.3 隠れた”IT投資をあぶり出し
企業戦略の根幹もアウトソースへ
  Vol.4 ネットを襲うリスクを管理し
障害に耐えて事業を継続する
Vol.5 ビジネスを支えるITインフラ
業務アプリとの分界点を明確に
  Vol.6 導入需要が成熟した環境下での
ネットワーク・アプリの新たな潮流
第2部 「ネットワーク・テクノロジー」
Vol.1 性能や稼働率の管理は全体を見て
局所的な視点では解決しない
  Vol.2  ネット構成の自由度高い広域イーサ
アプリの品質重視ならIP-VPN
Vol.3 ネットワーク・トポロジを再認識して
堅牢かつ柔軟なLAN/WANを
  Vol.4 IPv6はセキュリティ強化に活用
立派すぎるプロトコルは使えない
Vol.5 IP電話を真に活用する時代到来
システムや開発環境が成熟期に
  Vol.6 ネットワーク技術は流れが速い
経営とシステムの接点を忘れずに
第3部 「アプリケーションとネットワーク」
Vol.1 SOA時代のキーテクノロジー
オンデマンド・ネットワーキング
  Vol.2  アプリの処理をネットが支援
目的に合わせた連携体制を
Vol.3 一筋縄でいかぬレスポンス改善
システム全体の資源を見渡す
  Vol.4  ネットワークの仮想化が支える
自律的コンピューティング
Vol.5 ビジネスの継続性を実現する
アプリケーション・リカバリ
  Vol.6  オートノミックと仮想化の
切っても切れぬ深い関係
第4部 「ビジネス・レジリエンス」
Vol.1 災害対策の視点だけでは不十分な
ビジネス・レジリエンスの実現
  Vol.2  LAN,WAN,NICの冗長化に見る
ネットワークの高可用性設計
Vol.3 個人情報保護対策に不可欠な
漏えいリスクと利益のバランス
  Vol.4 災害時に矛盾無くデータを復旧
カギを握るデータの一貫性保持
Vol.5 無理・無駄のないBCPに不可欠な
復旧の優先順位付けと事後検証
  最終回 縮こまるな!
ネットワーク・エンジニア


連載にあたって

 1年間にわたり連載を担当します日本IBMの山下 克司です。

 ネットワーク機器の急速な低廉化が進んできた結果,企業にはネットワークが広く普及してきました。しかし投資が一巡し,ネットワークの時代といわれていながらネットワーク・サービス業界には閉塞感が漂っています。こういった空気を吹き飛ばし,元気なネットワークを復活させるためには,新しい視点から企業ネットワークに取り組むことが必要だと感じています。

 今回は「つなぐだけではもう通用しない〜理論派ネットワーキング」と題し,企業ネットワークの構築を進める技術者の立場から元気なネットワークを応援していきたいと考えています。

 私は現在ネットワーク技術者ですが,経理や販売管理など業務系データベース・アプリケーションの開発・技術支援をしていたことがあります。
 IBMがダウンサイジングの波をかぶった90年代には,レガシー・システムからオープンシステムへの移行,ATM(非同期転送モード)による企業ネットワークの構築などに取り組んで来ました。その中でクライアント/サーバーの隆盛と衰退からインターネットの黎明期も経験し,貴重な体験を得られたと感じています。

 こうした経験を経て,ネットワークを利用するアプリケーション技術に関して得た知識を利用して,コンサルティングの活動もしています。


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