写真1●日本OSS推進フォーラム ステアリング・コミッティ座長 岩岡泰夫氏
写真1●日本OSS推進フォーラム ステアリング・コミッティ座長 岩岡泰夫氏
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 「これまで企業の枠を超えた協力を実践してきた。オールジャパンで取り組む場として最適」---。日本OSS推進フォーラムは2011年11月21日、2011年度の成果報告会を開催。ステアリング・コミッティ座長のNEC 岩岡泰夫氏(写真1)は、こう語った。

 日本OSS推進フォーラムは、オープンソースソフトウエア(OSS)の活用に関する活動を行うコンピュータメーカーやシステムインテグレータなどの団体。経済産業省がオブザーバーとして加わっている。

「共通クラウド基盤構築で国際競争力を」

写真2●中国西安で開催された第10回北東アジアOSS推進フォーラム
写真2●中国西安で開催された第10回北東アジアOSS推進フォーラム
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写真3●クラウド技術部部会長の小池晋一氏によるソーシャルクラウド検討報告
写真3●クラウド技術部部会長の小池晋一氏によるソーシャルクラウド調査研究報告
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写真4●経済産業省 商務情報政策局情報処理振興課 課長補佐 菊島淳治氏
写真4●経済産業省 商務情報政策局情報処理振興課 課長補佐 菊島淳治氏
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 報告会では、まず座長の岩岡氏がフォーラム全体での活動を紹介した。2011年10月に中国西安で日本、中国、韓国のOSS推進組織による会議「第10回北東アジアOSS推進フォーラム」を開催(写真2)。各国のOSS活用に関する講演や、OSS貢献者賞受賞者の共同表彰などを実施した。

 日本OSS推進フォーラムでも、クラウドコンピューティング関連の活動が大きなテーマとなってきている。「日本OSS推進フォーラムは、これまで企業の枠を超えた共同作業を実践してきた。オールジャパンとして協力する場として最も適している」(岩岡氏)。2011年5月には4つのクラウド関係部会を設立。経済産業省より「2011年度ソーシャルクラウド基盤技術に関する調査研究」を受注した。

 ソーシャルクラウドとは、社会インフラ領域の情報システムを担うクラウドサービスのこと(関連記事)。ソーシャルクラウドの可能性や課題を検討してきたクラウド技術部部会長のNEC 小池晋一氏は「例えば医療介護者向けの見守り支援といった市場は2011年から2020年までの累計で約1兆2000億円、中高年向けの無料健康促進サービスは2020年までの累計で約1兆7000億円の財政削減効果がある」という試算結果を報告した(写真3)。

 ソーシャルクラウドの技術的課題として「10万人を超える利用者、100万個を超えるセンサー類からのビッグデータを処理するシステム、個人情報を保護しながらデータを活用するセキュリティ」などをあげ、「このようなソーシャルクラウド基盤を企業が個別に開発するよりも、OSSによる共通基盤を用意したほうがコストを削減できる。共通基盤によりグローバルな競争力を獲得し、新興国のインフラの受注を狙う」というシナリオを描いている。

 経済産業省 商務情報政策局情報処理振興課 課長補佐 菊島淳治氏は「関連政策の紹介」と題して講演。ITをさまざまな産業と融合することにより、国際競争力を持つ新しい産業を育成すべきと語った。具体的な産業領域として農業やヘルスケア、社会システムと関連したロボット、コミュニティ(地域)、コンテンツをあげ、新しいビジネスを創出する上でOSSの役割は高まっていくと考えていると述べた(写真4)。