カシオ計算機 矢澤篤志 執行役員 業務開発部長
カシオ計算機 矢澤篤志 執行役員 業務開発部長
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 カシオ計算機は2006年3月期まで4期連続で増収増益を継続中だ。その陰では、業務改革とIT活用を並行で進めながら、在庫削減などの業務効率化に意欲的に取り組んでいる。

 IT面では、計画の再計算を数十秒と高速に算出する生産・調達計画ツールや、販売・生産部門間および部材メーカーが互いに生産・調達状況を手軽に確認できる情報共有ツールを導入。業務改革面では、設計部門側で設計の共通化を進めて、調達部品点数と調達先を減らしたり、計画立案サイクルを2004年12月に隔週から週次に短縮するといった活動を、商品分野別に順次実施中だ。

 こうした活動の成果は在庫関連の指標に表れている。期末の全社棚卸資産残高を月次平均の売上原価で割った「棚卸資産回転月数」は、2003年3月期に2.7、2004年3月期に2.0、2005年3月期に1.9、2006年3月期には1.7まで減った。

 カシオのIT部門では、ほかにも国内販売物流システムのERP(統合基幹業務)パッケージへの移行、部品表統合データベースの構築、社内に400以上ある部門サーバーの統合、中国での生産・販売システムの構築などに取り組んでいる。

 社長直轄のIT企画部門である業務開発部の矢澤篤志部長は、これらのプロジェクトを業務部門と連携して推進する立場にある。

 一時は在庫削減にあたって、「ITありき」のプロジェクトが立ち上がったりした時期もあったという同社だが、矢澤部長のもとで、今の業務開発部は、社内のコミュニケーションを重視している。以前の同部は、半期に2回、2~3時間ずつ社長に報告していただけだったが、今では1000万円程度の開発案件であっても、社長にその都度、目的と効果を説明して承認を得る。その時には、プロジェクトの優先順位の確認や、経営課題についてもやり取りする。

 矢澤部長は、業務開発部のスタッフに対しても外部研究会への参加を奨励するなどして、ITの活用方法について利用部門との話し合いを活発に行える風土作りに務めている。

Profile of CIO

◆普段読んでいる新聞雑誌
日本経済新聞
日経ビジネス
日経ビジネスアソシエ
ハーバードビジネスレビュー
日経情報ストラテジー
日経コンピュータ

◆最近読んだ本
・『成長するものだけが生き残る』(上原春男著、サンマーク出版)…企業、組織、人の成長の原点が書かれていて、特に人材育成を考える上ではお薦め。
・『ドラッカー365の金言』(P.F.ドラッカー著、ダイヤモンド社)…机の横に置いて、辞書のような存在です。

◆仕事に役立つお勧めのインターネット・サイト
ITpro
Wisdom
キーマンズネット

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
日経コンピュータ部長会
全国IBMユーザー研究会連合会(会長)
IT研究会「ITSS分科会」委員
日本BEAシステムズ「SOA分科会」(座長)

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・途中経過も含めて、できるだけ多く報告の機会を持つ
・主資料はパワーポイント3枚で説明しきる(簡潔に説明する)
・ビジネスへの影響をわかりやすく説明する
・一度目から案を通そうと考えずに、自分の案にアドバイスをもらう位の気持ちで臨む

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、業界への不満など
常に一歩先んじて、技術を取り入れてユーザーに紹介してほしい。昨今、ほとんどの技術が欧米発となってしまい、日本では欧米での定着化の後で紹介されるようになってしまった。これでは、日本企業がどんどん技術的においていかれてしまう。日本向けのマーケットを意識するのもいいが、日本のユーザーにもっと世界レベルとの技術定着格差を意識させてほしい。

◆ストレス解消法
テニス、ゴルフ、ヨガ、ディンギー(海の上を滑る感覚が最高です)
とにかく、体を動かしていないと気がすみません。